「一房の葡萄」と言っても「ああ!あの作品ね!」という人は少なそうです。
私もこの仕事をするまで有島武郎すらあまり知りませんでした。
なんなら「ありしまたけろう」と読み仮名を振って「たけおでは」と連絡が来るくらいです。たけおです。
そんな有島武郎の「一房の葡萄 」ですが、なんでブログに書こうかと思ったのかと言えば謎とは全く何の関係もなく、読めば読むほど自分の中で消化しきれなくなっているので共有したかったからです。
あらすじ
小学生の主人公「僕」は絵を描くのが好きな少年です。
通っていた小学校には外国人がたくさんいて、「ジム」という男の子が持っていた絵の具がとてもとても綺麗で「僕」はうらやましかったのです。ジムは大して絵なんてうまくないのに。
友人の少なかった僕は昼休み一人で教室にいて、魔が差します。そうです、ジムの机から絵の具を盗んでしまいます。
しかしほどなくしてそれはばれました。
そうして僕は大好きな先生の部屋に連れて行かれ、先生にその悪事を伝えられます。
「本当なのか」と問われた僕は、先生にそれを知られるのが怖くて返事の代わりに号泣しました。
それを見た先生は僕以外を部屋から出し、優しく諭します。
先生は次の授業に出なくていい、と僕に言い、一房の西洋葡萄を僕の膝に置き自分は授業へ行きます。
そうしているうちに僕は寝てしまい、起きると先生以外みんな帰っていました。
帰る前に先生は「明日はどんなことがあっても学校に来なければいけませんよ。あなたの顔を見ないと私は悲しく思いますよ。屹度《きっと》ですよ。」と言い葡萄をカバンに入れました。
翌日いやいやながら僕が登校をすると、ジムがとんできて先生の部屋に手を引きます。
「ジム、あなたはいい子、よく私の言ったことがわかってくれましたね。ジムはもうあなたからあやまって貰わなくってもいいと言っています。二人は今からいいお友達になればそれでいいんです。二人とも上手に握手をなさい。」と先生はにこにこしながら僕達を向い合せました。
そして葡萄の一房をもぎ取って、はさみで真中まんなかからぷつりと二つに切って、ジムと僕とに下さいました。
私の悩み
これは童話なので、おそらく、おそらくですよ、葡萄も二人で分けたら美味しいね!
という話なのだと思うのです。
でもそうじゃない。私は気になっている。
あの、先生ジムに何したの。
そうしたらどうでしょう、先《ま》ず第一に待ち切っていたようにジムが飛んで来て、僕の手を握ってくれました。そして昨日《きのう》のことなんか忘れてしまったように、親切に僕の手をひいてどぎまぎしている僕を先生の部屋に連れて行くのです。僕はなんだか訳がわかりませんでした。
「ジム、あなたはいい子、よく私《わたくし》の言ったことがわかってくれましたね。ジムはもうあなたからあやまって貰《もら》わなくってもいいと言っています。二人は今からいいお友達になればそれでいいんです。二人とも上手《じょうず》に握手をなさい。」と先生はにこにこしながら僕達を向い合せました。
読んでいる限りはジムの性格は全くわかりません。実は元からいい奴だったのかもしれません。
でも、だって、絵の具盗んで「僕」はジムに一言も謝らないで、先生の部屋に避難してそのまま葡萄もらって帰って。なのに翌日「アハハハ、ウフフ」みたいに手をつないでいるなんて
こわい!
先生ジムに何したの…。
その部分の描写が一切ないのはこの童話においてはその情報は余分でしかなく、必要としていないからなのだと思いますが、もう私はそこが気になって気になって仕方ありません。
悪いことしたら怒られないといけない…という訳ではないとは思うのですが、このままでは「僕」のためにならないのではないか…。
いや、良いのか、悪いことをしてはいけない、他人とわけあう、正直に話す、などの事を「怒る」という表現以外でこの先生は子どもたちに伝えたのかなと思いました。
許してあげなさい、許すことが大切なのです。と遠くから聞こえた気がしました。
(全体的になんの話)